帯電を簡便に測定する機器として『表面電位計』がよく利用されます。価格も安価であることから、静電気管理の指標として導入される場合も多くあります。

しかし、測定方法を誤ると実際とは異なる電圧が表示されてしまい、誤った対策を講じるきっかけとなってしまいます。

そこで、表面電位計使用時の代表的な注意点をまとめました。 

電位計にアースを接続していない

対象の静電気を正確に測定するには、電位計に基準電位を設定する必要があります。測定時は設備の筐体などからアースをとるようにしてください。

測定距離に注意

機種によって測定距離が決まっていますので、その距離を確保して測定してください。

測定対象の背面に注意

対象の背面に帯電物や導体があると正しい測定値が表示されません。測定対象が帯電している場合、背後に導体があると測定対象の電荷に影響されて導体から逆電荷が発生します。この時、電荷と逆電荷が釣り合うことで電界が閉じてしまい、測定器からは0Vと認識されます。

背後に導体があると電位計から静電気が見えなくなる>

測定対象のサイズと測定範囲の関係に注意

表面電位計は、機種によって測定範囲(面積)が決まっています。表示される電圧は、この面積の平均値になります。
例えば、測定範囲がφ100mmの場合に、10mm角の電子部品を測定しようとしても、正確な測定値は表示されません。
この場合は、測定範囲の狭いプローブ型の電位計を選定する必要があります。
なお、半導体端子の測定など、より小さい部分を測定する場合は接触型表面電位計を利用します。

<対象に合った測定範囲のプローブを使用する>

対象が重なった状態で測定しない

フィルム材料など、何層にも重なった状態のまま測定すると、複数枚の帯電が測定値に加算されてしまいます。枚葉・ロール状態を問わず、測定時は1枚のフィルムを対象に行ってください。
なお、帯電は±が混在している場合が多く、2枚のフィルムの間で正負の電荷が引き合ってしまうと、その分見かけの帯電量は下がります。このため、電位計の測定値をまとめて測定したフィルムの枚数で割っても、正確な帯電量にはなりません。

<対象は重ねずに測定する>

剥離面や放電個所などの測定はNG

フィルムロールの繰り出し部など、剥離部では放電が発生している可能性があります。放電では空気が電離して電子やイオンが発生しており、測定値が変動するなど正しい値を得られません。場合によっては電位計が放電を誘発する可能性もあります。したがって、剥離帯電の評価では剥離工程の後流での測定をお勧めします。

<放電により正確な測定ができない>

プラスマイナスが混在する帯電に注意

多くの場合、帯電状態は正負の電荷が混在しています。例えば-100Vのマイナス帯電と+50Vのプラス帯電が混在している場合、電位計では-50Vと表示されます。「測定すると0Vだが帯電が疑われる」場合、正負の帯電がほぼ拮抗して存在していることが考えられます。
正負の帯電の混在を確認するには、微細な範囲を測定できる機器を使用するか、トナーによるパターン可視化がお勧めです。

リンク –> 静電気パターン可視化サービス

<必ずしも0V=無帯電ではない>
静電気パターンの可視化例|アルミとPETの摩擦帯電
<帯電パターン可視化例>

移動体の測定は測定時間の影響を受ける

表面電位計は、一定の周期で電圧を測定しています。この周期より速く測定対象が移動してしまうと、正確な電圧を測定できません。工程内で移動中の対象を測定する場合は、「あくまで帯電の傾向を把握する」ことを目的としてください。

防爆環境に注意

一般的な表面電位計は防爆環境では利用できません。防爆環境で使用する場合は、防爆対応機種を選定してください。

回転体など安全確認を

工程内で測定する場合、移動体や回転体付近での作業が発生する場合があります。アース線が回転体に巻き込まれるなど、不慮の事故が発生しないよう、安全に十分配慮して作業を行って下さい。

継続的な測定・評価が必要

季節や測定時間によって湿度などの環境が変化するため、継続的な測定が必要です。また、フィルムロール繰り出し部の帯電測定の場合、ロールの外周側よりも巻き芯側に近いフィルムの方が強く帯電している可能性があります。そのほか、材料切り替えやオペレーターの交代などによっても帯電量が変動する可能性がありますので、継続的な測定が必要です。

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