静電気関係の疑問をQandA形式でまとめています。

静電気の基本情報

静電気は2つの材料が接触・剥離すると必ず発生します。プラスチックなどの絶縁体のみならず、金属などの導体でも静電気は発生します。
なお、導体の場合、他の材料に接触しなくても、近くに帯電物体があると誘導帯電が発生するため注意が必要です。

金属などの導体は、導体内の電子を自由に移動させることができます。帯電していない状態では電子は導体中に均一に分布していますが、近くに帯電物があり電界が発生すると、電界につられて導体中の電子の分布が偏ります。この状態を誘導帯電といい、帯電物が取り除かれると電子の分布は元に戻ります。
誘導帯電は、アースの有無にかかわらず発生し、放電の原因となるため注意が必要です。

2種類の物質が接触・剥離した際、一方の物質は正に、他方の物質は負に帯電します。このとき、接触・剥離した際にどちらが正/負になるかは物質の種類によって決まっており、正になりやすい物質から負になりやすい物質を順に並べた一覧を帯電列といいます。

帯電列の重要性と注意点
https://静電気制御.com/taidenretsu/

帯電します。一方で帯電電荷の分布は絶縁体(プラスチック等)と導体(金属)で異なります。
・絶縁体……帯電した電荷はその場にとどまり続ける。
・導 体……電荷は導体内に拡散する(周囲に帯電物がない場合)。
なお、導体は絶縁体より電荷を溜める容量(=静電容量)が大きいため、同じ電荷量の場合、絶縁体よりも導体の方が測定される電圧が低くなります。

必ずしもそうではありません。
静電気管理におけるアースの設置は、同電位化により放電リスクを無くすことにあります。したがって、下記のような条件は同電位が崩れ、放電リスクが発生します。

・周囲に接地していない導体がある
・周囲に帯電した絶縁体がある

そのほか、プラスチックなどの絶縁体は電荷を移動できないためアースの効果が無いことも注意してください。

詳しくは下記のリンクをご参照ください。

アースの役割・取り方と見落としがちな点
https://静電気制御.com/earth01/

一般的に帯電量は相対湿度と相関があります。相対湿度が高いと、1)材料表面に付着した水分が帯電電荷をリークさせる、2)材料表面に水分があることで、材料の接触面積(帯電面積)が減少する、効果があります。

下記の理由が考えられます。
・季節変動
・表面の汚れ……表面の汚れがあれば、工程
・加工速度の違い……剥離や摩擦のスピードが変化すると帯電量も変動します。
・接触面積の違い……表面粗さなどが変化すると、材料と工程部材との接触面積が変化します。なお、フィルム材料では巾方向に厚みムラが生じやすく、帯電ムラが生じやすいです。
・材料のなじみ……工程を繰り返していると、材料表面から工程部材(ロールなど)の表面に材料が移行し、材料と工程部材表面が同質化します。この現象により帯電量が減少する場合があります。

電気(電荷)の移動のしやすさは対象となる材料の導電性によって変化します。導電性が高い材料(導体)では素早い速度で移動でき、低い材料(絶縁体)では移動そのものができません。この電荷の移動のしやすさの指標が抵抗率です。すなわち抵抗率が低い材料は電荷が速やかに移動でき、高い材料は移動できないという関係です。以下は各材料の抵抗率の例です。

・銀(10^-8:導体)
・ケイ素(10^3:半導体)
・天然ゴム(10^14:絶縁体)
・ポリスチレン(10^16:絶縁体)

一般的には10^9以下であれば数秒以内に帯電した電荷を減衰できるといわれており、静電気対策の目安となります。

フィルムやトレイなどには導電レベル~帯電防止レベルの静電気対策製品が上市されていますが、静電気対策の場合、必ずしも低抵抗であればよいとは限りません。抵抗が低いと電荷の移動速度が速いため放電のリスクが生じます。電子部品など放電による静電破壊を受けやすいワークを移動させる場合などは、急な電荷移動を防ぐため、抵抗率の低すぎないグッズを選定する必要があります。

一般的に大気の放電開始電圧(絶縁破壊電圧)は3kV/mmとされており、これより高い電圧があれば放電リスクがあると考えられます。
一方、パッシェン則では大気中で火花放電が発生する電圧は約330V以上とされています。ただし、パッシェン則は、平行電極間での放電を想定しており、鋭利なエッジでは電界集中によってより低い電圧で放電開始します。避雷針、除電器、コンロの着火源などは、電界の集中を利用するため先端を鋭利にしています。

除電機器関係

下記のような方法があります。

1)除電機器の使用
・自己放電式除電器(除電紐など)
・イオナイザ

2)加湿による帯電防止・除電

3)アルコール塗布による除電

4)帯電防止塗工

不必要に除電機器を増設することは導入/ランニングコストを増加させるのみならず、断線や電源入れ忘れなどの見落としを誘発する恐れがあり不適切です。また、設置密度が高すぎると相互干渉により除電効果の低下や帯電を誘発する恐れもあります。除電機器は要所要所に最小限配置することが理想です。

帯電した物体に対して帯電電荷と逆極性のイオンや電子を供給し中和します。イオンの供給方法は、電圧印加式/光電離式/放射線式などがあります。

イオナイザの種類・比較と選定方法
https://静電気制御.com/ionizer_selection/

除電紐と帯電物体との間に生じる電位差(電圧差)が、除電紐の繊維先端でコロナ放電を誘発し、放電により生じたイオンや電子が対円物体の静電気を中和します。効率的にコロナ放電させるため、除電紐は接地して使用します。
一方、除電紐を除電対象に直接触れさせると摩擦・剥離帯電を生じさせるため、離して使用します。

除電が適切に行われているかどうかは、下記の方法で確認します。
・除電前後での電位の変化……表面電位計で電圧の変化を確認します。
・トナーパターンによる評価……表面電位計で確認できない微細な正負パターンなどを視覚化し、効果を確認します。
・チャージプレートモニタによる測定……正負のイオンバランス、除電速度を確認します。

電圧印加式のイオナイザの場合、放電針の清掃時に異物が針に付着していないかを確認します。
また、各放電針が摩耗していないか、放電針どうしを見比べて、特定の針が摩耗していないかをチェックします。

正負のイオンがバランスよく十分に生成されていることを確認するにはチャージプレートモニタを使用します。

以下のような事例があります。

1)設置位置が不適切で除電効果が出ない
・ワークの背面に接地された金属がある
・ワークの帯電面の反対側に設置している

2)イオナイザの設置距離が不適切
・イオンが十分に到達する距離よりもワークが遠くにある
・ワークが近すぎて正負のイオンバランスが崩れている

3)帯電量が大きすぎる
・段階的な除電を実施していない

4)イオナイザの動作周波数が低い(ワークが移動する場合)

5)電源が入っていない

静電気管理関係

人体の帯電防止方法は、主に1)リストストラップによる接地、2)導電性靴+導電性床による接地の方法があります。静電気障害を無くす観点では、冗長性を持たせるためにも、1)/2)を合わせた対策が有効です。

1)人体と確実に導通させるため、バンドをしっかり装着させる。
2)乾燥肌の方は、乾燥肌対応のストラップを選定する。
3)断線を避けるため、ストラップの配線にテンションをかけない。
4)毎日、リストストラップチェッカーで導通を確認する。

アース付きタイプはアースを介して静電気を除去します。この場合、アースに接続されているワーク/機器/人体が同電位となり、放電を防ぎます。
一方、アースフリータイプは、人体の帯電を気中への放電で減衰させる仕様のため、放電を開始する電圧以下の静電気は原理的に取り除けません。この場合、ワーク/機器と人体とは同電位とはならないため注意が必要です。

1)使用中に脚が浮かないよう適切なサイズを選定する。
2)作業時に靴を脱がない。
3)靴を椅子の脚部に乗せるなど、靴を導電性床から浮かさない。
4)導電性床と導通していない脚立・ステップなどを使用しない。
5)絶縁性の中敷きを使わない。
6)毎日、チェッカーで導通を確認する。

靴や機器との摩擦にさらされる導電性床は、徐々に導電性層が削れてしまいます。また、表面の汚れでも導電性が発揮できない場合があります。このため、表面抵抗計を用いて定期的に導通を確認する必要があります。

下記のような機器があります。

・帯電量の測定
・帯電電位計
・表面電位計
・ファラデーケージ
・クーロンメーター
・帯電・放電パターンの可視化
・トナー分析
・高感度カメラ
・放電の検出
・EMIロケータ
・イオンバランス(イオナイザ用)
・チャージプレートモニタ

下記もご覧ください。

静電気関連機器・帯電防止材料などについて

フィルム/マットが接地されている場合、ワークが導電性であればフィルムやマットに触れさせることで除電されます。一方、プラスチックなどの絶縁体の場合、電荷の除去はできません。また、導体・絶縁体を問わず、ワークをフィルム/マットから持ち上げたタイミングで剥離帯電が発生します。

帯電防止フィルム/マット自体は接地がある限り帯電しません。このため、除電されているワークとの間に電位差(=放電リスク)を生じることがない利点がありますが、過信は禁物です。